お伊勢さまを祖神(おやがみ)としてお慕いする心は今も変わりませんが、遠い昔は交通も不便であったことから伊勢参宮の風習はあまり盛んではなかったようです。
しかし、平安時代後期から鎌倉時代にかけて現れた御師(おし:お参りの人たちのためにご祈祷をしたり、案内や宿泊の世話をする。また年末には神宮のおふだや暦を配った)の活動と共に「伊勢講(いせこう)」という伊勢参りの講社も各地に組織されるなどして、みるみる参宮が盛んになり、庶民特に農民のお参りが増えました。
この旅は、お伊勢参りだけでなく、奈良・京の都の観光、熊野参りもかねることのできる一生に一度の遊楽の旅でもありました。
江戸時代になると、このお伊勢参りに、ほぼ六十年ごとにたくさんの人々が集まる現象(幕末には年間五百万人以上)も起こりました。 幕府も公認のこの旅は、神恩のおかげ、あたたかく迎えてくれる沿道の人たちのおかげでお参りを果たすことができたことなどから、「おかげ参り」ともいわれるようになったようです。
お参りを熱望する心は今の世の中も変わらず、今日では年間九百万人もの参拝者を数えます。