遷宮(せんぐう)とは「宮うつし」の意味で、新しい神殿を造り、そこに神さまのおうつりを願うことです。式年とは「定めの年」の意味で、神宮では二十年に一度とすることを千三百年前に天武天皇がお定めになり、持統天皇四年(六百九十年)に第一回の式年遷宮が行われ、平成五年には第六十一回目のこの国家の重儀が天皇の思し召しにより、国民の尊いご奉賛をもって行われました。
社殿は掘立柱(ほったてばしら)に萱(かや)の屋根という素朴なヒノキの白木造りです。第一回当時、すでに法隆寺が造られており永久的な建築が可能でしたが、神代からの伝統を重んじ、神さまの最もおよろこびになられる殿舎としてこの建築様式が選ばれ、今日に引き継がれたと考えられます。
神道では浄明正直(じょうみょうしょうじき)、つまり清く明るく、直(なお)く正しくうるわしい心を大切にしていますから、神さまのおはします神殿も常に清々(すがすが)しくあることを理想とします。古代の人々は神さまも万物も、命が親から子へと引き継がれていくように、生まれ変わると考えました。二十年を一つの区切りにしたのは、それが人の一生の中でも、建造技術や調度品、祭器具などの製造技術の伝承の面からしても最もふさわしい節目となる年限であったのです。