「式年」とは決められた一定の年限のことを、「遷宮」とは宮を遷(うつ)すことをいいます。つまり「式年遷宮」とは、周期的に社殿を新造して、旧殿から神さまにお遷りいただくことです。伊勢神宮では二十年に一度、社殿を始め御装束・御神宝類・御調度に至るまで全て新しくととのえ、神さまに新社殿にお遷りいただく最大のお祭りになっています。このほかにも住吉(すみよし)大社・香取(かとり)神宮,鹿島(かしま)神宮・宇佐神宮・春日(かすが)大社・諏訪(すわ)大社などの例がありますが、伊勢神宮の式年遷宮の制度は、今から約千三百年前の飛鳥時代、天武天皇により定められて、持統天皇の四年(六九〇年)に内宮(ないくう)、六年には外宮(げくう)の第一回式年遷宮が行われました。以来、中世の内乱の時期に一時の中断があったものの、伝統を守り二十年毎にずっと繰り返されてきたのです。
第六十一回式年遷宮は、平成五年十月二日に内宮、五日に外宮の遷宮が行われました。かつて、この式年遷宮の費用は、国の垂要な祭儀とあって、神宮の創建以来つねに国費・公費を、もってまかなわれていました。しかし、戦後は伊勢神宮が国家の管理を離れたため、昭和二十八年の第五十九回式年遷宮より、広く国民の奉賛を仰ぎ行われるようになったのです。