神職(しんしょく)が笏(しゃく)を持っているのはなぜですか

神社にいる人たち

 今では、「笏」を持つことは神職に限られていて、神職には欠かすことのできない持ち物の一つとなっています。しかし、かつては官位ある人であれば、儀礼用の服装をするときに、必ずこの笏を持ったものです。
 笏は、欽明天皇の頃(六世紀)に、中国から伝来したといわれており、中国においては、役人が君命の内容を、忘れないように書いておくための板であったようです。日本においては、君前での備忘のため、笏に必要事項を書き記した紙(笏紙(しゃくがみ))を、裏面に貼って用いていました。のちには重要な儀式や神事に際し、笏を持つ人のその姿勢や、さらには心を正すための持ち物となったのです。
 かつては、象牙製の牙笏(げしゃく)もあったようですが、今はすべて櫟(いちい)・椎(しい)・樫(かし)などでつくられた、木製の木笏(もくしゃく)を使っています。
 ところで、笏という字ですが、辞書で引くと「コツ」という読みに(音読み)になっていて、「シャク」ではありません。これについては、「コツ」では骨に通じることからよくないとされた説と、笏の長さが約一尺であることから「シャク」とされたとの説があります。